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- なぜDBS療法がパーキンソン病に効くの?
DBS療法がどうして、薬では治らないパーキンソン病の症状に効くか、これを理解するには、パーキンソン病の病態生理を理解する必要があります。まず、はじめに正常大脳基底核における運動制御回路について簡単に説明をし、パーキンソン病患者の場合と比較してみます。
脳の中心部は神経細胞の集合である大脳基底核といわれる部分が存在します。これは、周辺との神経線維結合によって尾状核、被殻、淡蒼球、視床下核などに区別され、運動機能の調節を行っています(右側の図を参照)。
この大脳基底核では、主にグルタミン酸などを伝達物質として持っている興奮性の神経(図1、2で赤色の矢印)とγアミノ酪酸(GABA)を有する抑制性の神経(図1、2における緑色の矢印)によって複雑に連結され、回路が形成されています。
黒質緻密部から放出されるドパミンについても伝達される神経によって興奮性と抑制性の相反する働きがあり、これによって、図1に示すように、間接路といわれる神経回路と直接路といわれる回路を形成します。こうして、運動を行う際の動作の微妙な調節を行っているのです。
ところが、パーキンソン病の患者では、この神経回路の内、ドパミンが欠乏するため、図2に示したとおり、淡蒼球内節や視床下核で、神経核の異常な過剰活動が観察されます。こうして、視床-大脳皮質投射が過剰抑制されることで、運動野の活動低下により動作が緩慢となり、さらに、淡蒼球から視床への出力の病的増大に加え、バースト発射などの異常活動の増加が、振戦や筋固縮などの症状に関与しているといわれています。
現在までにパーキンソン病では視床下核と淡蒼球内側が過剰活動を起こしている事や、大脳基底核からの抑制投射を受ける前頭葉領域の活動低下も明らかにされています。つまり、パーキンソン病では淡蒼球内節の活動亢進により視床-前頭葉投射が過剰抑制されています。また、パーキンソン病の患者の視床では、この部分の異常脳波に一致して、振戦が起こることも知られています。これらの異常な過剰活動を認める視床、視床下核、淡蒼球内節を電気刺激して、運動回路の異常を是正しようとするのが現在の外科治療、DBS療法の理論的根拠です。図3に示すとおり、これらの神経核を電気刺激することで、異常興奮している神経核の活動をある程度麻痺させ、丁度いいレベルに調節すると言った方がわかり易いでしょう。