認知症治療薬の種類
現代の医療レベルで、認知症を完全に治す治療法はありません。一方で、認知症の病状進行を抑えるお薬は既にいくつか開発されています。
代表的な認知症治療薬を並べてみます。
一般名 | 商品名 | 適応 | 形 |
ドネペジル | アリセプト | アルツハイマー型レビー小体型 | 内服 |
ガランタミン | レミニール | 軽度~中等度のアルツハイマー型 | 内服 |
リバスチグミン | イクセロンパッチ | 軽度~中等度のアルツハイマー型 | 貼付 |
メマンチン | メマリー | 中等度~高度のアルツハイマー型 | 内服 |
神経細胞は情報伝達を行う際に、いくつかの物質が関与しており、その1つにアセチルコリンというものがあります。アセチルコリンはコリンエステラーゼというものにより分解されますが、コリンエステラーゼの働きを阻害することで、アセチルコリンの濃度を高めることができます。また、アルツハイマー型認知症の患者さんでは、神経を興奮させる物質により、脳内のNMDA受容体が過剰に活性化され、神経細胞が障害されます。ですから、このNMDA受容体の過剰な働きを抑えることで、神経細胞の障害を抑えることができます。
新薬:貼付型のドネペジル
認知症の治療薬は、リバスチグミンを除いて、基本的にすべて飲み薬です。リバスチグミンは皮膚から薬剤成分が吸収されるように作られた貼り薬です。
認知症は高齢者に多い病気であり、認知機能が低下していることから、飲み薬をきちっと毎日飲むことが難しいケースが多々あります。また、それを防ぐために家族が内服管理をする場合もありますが、精神的負担になっていることも少なくありません。さらに、高齢になれば、飲み込みの機能が低下することから、本人の意思に反して飲ませることで誤嚥性肺炎などにつながるケースもあります。
貼り薬は飲み薬に比べ、患者さんの服薬コンプライアンス(用法・用量を遵守して使用すること)が高い傾向にあり、薬を飲み込めない方などにも簡単に使用できるというメリットがあります。ドネペジルはこれまで飲み薬しかありませんでしたが、2023年4月より、ドネペジルの貼り薬である「アリドネパッチ」が販売開始となりました。このお薬は、1日1回の貼付で、アルツハイマー型認知症の患者さんにおいて飲み薬のドネペジルと同等の効果が期待できます。軽症~中等症の方には1日1枚27.5mg、高度の方には最大1日1枚55mgまで増量可能です。
デメリットは、新薬であることから薬価が高いことがあげられます。アリドネパッチ27.5mgの薬価は約300円であり、経口薬のドネペジル5mgの薬価(60円程度)と比較して、約5倍と非常に高価です。また皮膚に貼り付けることから、赤み、かぶれ、かゆみなどを起こす可能性があります。
現状の薬価を考慮すると、何らかの事情で薬が飲めない方が主な対象になるかと思います。今後の認知症治療に更に期待していきましょう。
noteにも掲載しています。
⇒https://note.com/nouproblem/n/n17e8e40221d2
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