はじめに
くも膜下出血は非常な重症な病気であり、その治療を行うにあたっては詳細な知識が必要です。出血後の再破裂予防のために、開頭クリッピング術やコイル塞栓術が行われますが、たとえうまく治療できたとしても、特に血腫量が多い患者さんの場合、発症後14日目までは脳血管攣縮(スパズム)を起こすことがあります。スパズムは血管が細くなることで、脳への血流が減少し、脳梗塞を起こしてしまいます。ですので、スパズムの予防が非常に重要であり、これまでさまざまな治療がなされてきました。
クラゾセンタンとは?
エンドセリンA受容体拮抗薬クラゾセンタン(商品名ピヴラッツ®)は、脳動脈瘤によるくも膜下出血治療後のスパズムとそれによる脳梗塞の発症抑制を対象として、2022年に発売開始となりました。エンドセリンがエンドセリンA(ETA)受容体に結合することで血管の収縮を誘発するのですが、クラゾセンタン自身がETA受容体に結合することで、エンドセリンが受容体へ結合するのを阻害し、血管の収縮を抑えるのです。
対象となる患者さんや投与方法は?
動脈瘤破裂によるくも膜下出血に対して、クリッピングもしくはコイリングを行い、再破裂予防が達成された方のみが対象です。
一方で、WFNS grade 5(最重症)、広範囲脳梗塞、くも膜下腔の血腫が1mm未満の患者さんでは、有効性は不明です。禁忌となる方は、妊婦あるいは妊娠の可能性がある方、重度の肝機能障害がある方、頭蓋内出血が止まっていない方などです。
投与量は、クラゾセンタン300mg+生理食塩液500mLを、時間あたり17ccの速度で静脈内投与します(中等度肝機能障害がある方へは半量、リファンピシン内服中の方は1/4量に減量します)。投与期間は基本的に発症48時間以内から発症15日目まで継続します。
副作用は?
いくつか報告されている副作用のうち、特に注意すべきなのが、胸水、肺水腫(いずれも10%程度)、脳浮腫、脳出血などです。ほかにも、貧血、低ナトリウム血症、低血圧、肝機能異常などが報告されています。医師や看護師は、点滴量、尿量などをよく観察し、体液量の調整に細心の注意を払う必要があります。また、血圧低下や心電図異常を起こすことがありますので、バイタルのモニタリングは継続したほうが良いでしょう。
noteにも掲載しています。
⇒https://note.com/nouproblem/n/nab2478e84044
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