はじめに
モータリゼーションによる自動車の急速な普及により、交通事故による頭部外傷が多発した時期がかつてありました。それにあわせて脳神経外科をかかげる病院が全国に次から次に開設されました。頭部外傷の手術は、脳神経外科黎明期からおこなわれており、最も歴史のある治療と言っても過言ではありません。近年、交通事故は減少しているものの、高齢化による転倒の増加もあり、依然外傷手術のニーズは衰えていません。
頭部外傷の手術の最大の特徴は、1分1秒を争うということです。ですので、バイタル、瞳孔所見を含め、患者さんの状態をしっかりと把握し、少しでも変化があれば迅速にCT検査を行い、必要に応じて開頭手術等を行う必要があります。
頭部外傷による代表的な病気
手術適応となる頭部外傷には以下のような病気があります。
1. 急性硬膜下血腫
脳の表面にある小さい血管がやぶれることで、硬膜の下に血のかたまりができる病気です。脳挫傷(脳自体の損傷)を伴うことも多く、死亡率は50%以上と非常に経過が悪いとされています。血腫の厚さが1cm以上であるもの、正中偏位が5mm以上のものは手術が勧められます。手術は、大きく頭を開けて(参照:開頭手術)、血腫を取り除く手術です。場合によっては損傷した脳を一部取り除くこともあります(内減圧術といいます)。
2. 急性硬膜外血腫
特に若い人に多い外傷性脳出血です。頭蓋骨が骨折することで、脳を覆う膜である硬膜の表面の太い血管(硬膜動脈)が破れ、動脈性の出血を起こします。頭蓋骨と硬膜のすき間に大量の出血が起こり、血のかたまりを形成する病気です。受傷直後、意識が急に悪くなり、いったん回復し(意識清明期)、その数時間後にまた悪くなるという意識レベルの変化を起こすといわれています(あくまでも教科書的な話で、実際の現場ではそうでもないこともあります)。急性硬膜下血腫とは違って、脳の損傷を伴うことが少ないですので、硬膜下血腫よりは経過は良好である場合が多いです。血腫の厚さが1~2cm以上の場合や、脳ヘルニアがある場合、症状が徐々に悪くなっている場合などは緊急手術の適応となります。
まとめ
緊急手術が必要な外傷性脳出血についてまとめました。ほかに、一般的には手術適応とならない外傷性脳出血として、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、びまん性軸索損傷、脳震盪など、さまざまな病気がありますので、別の記事にまとめさせていただきます。
noteにも掲載しています。
⇒https://note.com/nouproblem/n/n97a2c4172f29
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