はじめに
脳の血管はいくつも枝分かれしているため、それぞれの部分に名前がついています。そして、それぞれの名前に英語の略語がつけられています。今回は、脳の血管の略語について解説していきます。
脳の動脈の名前と略語
脳の血管は、大きく分けて2対4本あります。前から上がってくる血管が内頚動脈(Internal carotid artery: IC)、後ろから上がってくる血管が椎骨動脈(Vertebral artery: VA)で、それぞれの血管が左右1本ずつあるので、合計4本となります。
内頚動脈はあごの下から目の奥まで上がっていき、そこで2股に分かれます。真ん中に向かうものを前大脳動脈(Anterior cerebral artery: AC)、側頭部に向かうものを中大脳動脈(Middle cerebral artery: MC)と呼びます。椎骨動脈は左右のものが途中で合流し、脳底動脈(Basilar artery: BA)となります。そして、目の奥ほどの高さまで上がると、左右に分かれます。これを後大脳動脈(Posterior cerebral artery: PC)と呼びます。椎骨動脈からは後下小脳動脈(PICA)、脳底動脈からは前下小脳動脈(AICA)と上小脳動脈(SCA)が分岐し、それぞれ小脳を栄養しています。
また、左右の前大脳動脈をつないでいる短い血管を前交通動脈(Anterior communicating artery: ACom: エーコム)前(内頚動脈)と後ろ(後大脳動脈)をつないでいる血管を後交通動脈(Posterior communicating artery: PCom: ピーコム)と呼びます。なお、VAとBA以外のそれぞれの動脈の名前には末尾にA(artery)がつくこともあります。つまり、中大脳動脈はMCともMCAとも呼ばれます。
まとめると以下のようになります。
前の血管 | IC→AC/MC |
後の血管 | VA→BA→PC |
左右をつなぐ血管 | ACom |
前後をつなぐ血管 | PCom |
脳動脈瘤の略語
脳動脈瘤は脳の血管の主に分かれ目にできるコブのことです。破裂するとくも膜下出血など重症な状態になってしまうことがあり、適切な対処が必要です。脳動脈瘤が起きやすい部位とその略語は以下の通りです。
中大脳動脈瘤:MC
前交通動脈瘤:ACom
前大脳動脈瘤:AC (distal)
内頚動脈瘤:IC
内頚動脈後交通分岐部動脈瘤:IC-PC
脳底動脈先端部動脈瘤:BA top
脳底動脈上小脳動脈分岐部動脈瘤:BA-SCA
椎骨動脈後下小脳動脈分岐部動脈瘤:VA-PICA
ここで、1つだけおかしいことに気づくかと思います。内頚動脈後交通分岐部動脈瘤は先ほどの説明と照らし合わせると、IC-PComになります。PCは本来、後大脳動脈を意味します。しかし慣例上、IC-PComはIC-PCと呼ばれていますので、注意してください(IC-PComと呼ぶこともあります)。
noteにも掲載しています。
⇒https://note.com/nouproblem/n/nf3f49993ce4f
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