はじめに
髄膜腫とは、脳やせき髄を包んでいる膜である髄膜から発生するできもの(腫瘍)です。腫瘍という名前ですが、ほとんどのものが良性腫瘍です。脳腫瘍全体の約1/4を占めており、神経膠腫とならんで、最も多いタイプの腫瘍の1つです。多くの場合1つだけ見つかることが多いですが、稀な病気の方の場合には多発することがあります。近年は脳ドックの普及により、症状がない無症候性髄膜腫が多く発見されるようになりました。髄膜腫は発生する場所により、いろいろな名前がついています。
原因は?
髄膜腫の原因はわかっていません。近年の遺伝子解析研究の発展により、いくつかの特徴的な遺伝子変異を腫瘍が持つことはわかってきました。また、女性の方が病気になる割合が高く、女性ホルモンとの関連も示唆されています。ほかには、放射線を浴びた場合、免疫不全を起こしている場合などもリスク因子と考えられています。
症状は?
髄膜腫が大きくなると、脳が圧迫されますので、圧迫された脳が持つ機能が障害されます。運動野を圧迫している場合には、手足が動かしづらくなりますし、視覚野を圧迫している場合には、視野に異常があらわれます。脳の圧迫が続くと症候性てんかんを起こす場合があります。また、腫瘍が非常に大きく、脳を強く圧迫している場合には、脳全体の圧が上がってしまうため、頭痛や吐き気、ひどい場合には意識障害が起こることもあります。
検査は?
造影剤を使用したMRI検査を行うことで適切な診断が可能です。また、腫瘍にどの程度、血液が流れ込んでいるかを確認するために脳血管撮影というカテーテル検査を行う場合があります。
治療の必要性は?
特に症状がなく、経過観察している間にも腫瘍が大きくならなければ、そのまま様子を見ても問題ありません。一方で、すでに何らかの神経症状がある場合や腫瘍が大きくなってきている場合は、手術を中心とした治療が必要になります。また、サイズが小さくても、視神経など重要な構造物の近くにできている場合(蝶形骨縁髄膜腫、前床突起髄膜腫、鞍結節部髄膜腫など)には、将来の機能温存をもくろんで早めに手術を検討する場合もあります。髄膜腫の治療法は手術がメインですが、サイズが3cm以下の場合や手術が難しい場所にある場合には、放射線治療を最初に行うこともあります。一方で視神経の近くに対して放射線を当てた場合には、将来の神経障害のリスクが高くなるといわれています。
術前塞栓術
髄膜腫は種類によって非常に血流が多い場合があり、手術中の出血が多くなってしまうことが予想されます。そのような場合には手術前に、血管内治療で腫瘍に流れ込む血管を接着剤やコイル(金属の糸)で詰めることがあり、これを術前塞栓術といいます。術前塞栓術を行うことで、手術中の出血量が減る、腫瘍が柔らかくなり切除しやすくなるなどのメリットがあります(下図参照)。
noteにも掲載しています。
⇒https://note.com/nouproblem/n/n6cf5bb68ab5e
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