はじめに
脳卒中は、麻痺やしびれ、うまく話せない、目が半分見えないなどのさまざまな後遺症を残す病気です。自動車の運転は患者さん自身だけではなく、周囲の車や歩行者にも重大な影響を与えてしまう可能性があるため、脳卒中後の運転再開には慎重な判断が必要となります。脳卒中になってしまった場合に、退院後、自動車の運転をいつから再開できるのかについてまとめていきたいと思います。
脳卒中後に運転ができなくなる要因
どのようなことが障害となって運転できなくなるのでしょうか。まず、強い麻痺がある場合には、アクセルやブレーキなどのペダルを踏むことができません。また、後頭葉の脳卒中により、視野が半分かけている場合にも、片側の情報が入ってこないため、運転は非常に危険です。さらに、判断力や瞬発力の低下は事故を招きます。さらに、脳卒中により傷ついた脳が異常な電気信号を発信し、症候性てんかんを起こすことがあります。てんかんにより意識がなくなってしまった場合には、重大な交通事故につながり、過去にもこのような例がいくつか報告されています。いずれのケースも、歩行者を巻き込んだ重大な事故につながっており、非常に痛ましい結果となっています。ですから、脳卒中後の運転再開には非常に慎重な判断が必要なのです。
運転再開までの流れ
脳卒中後の運転の再開には主治医の診断と免許センターでの許可が必要となります。2014年の道路交通法の改正により、運転免許更新の際には、健康状態の申告が義務付けられています。虚偽の申告をした場合には罰則もありますので、注意が必要です。
通常の流れを説明します。医療機関で院展再開のための、「運転評価」を受けます。「運転評価」は高次脳機能評価やドライブシミュレーターを使ってテストなどを行います。その後、主治医の許可が下りなければ運転の再開は不可能です。主治医の運転の許可が下りた場合には、都道府県の免許センター「安全運転」窓口(ダイヤル#8080)で電話相談を行いましょう。その際に主治医の診断書の提出が求められた場合には、都道府県の免許センターや警察署で「主治医の診断書」の書類をもらい、主治医に書いてもらいましょう。その後、都道府県の免許センターに行き、「適性検査」を受けてください。「適性検査」には実車運転によるテストが含まれる場合があります。その検査で合格すれば、運転の再開や免許の更新が可能です。不合格の場合でも、一定期間たった後、再度適性検査を受けられることがあります。
まとめ
脳卒中後の自動車運転に関して説明してきました。脳卒中後の後遺症の重さは、患者さんごとに大きく異なってきますので、運転の再開には個別の判断が必要です。運転は本人だけではなく、歩行者や周りの車を巻き込む可能性があるため、再開には慎重になるべきであり、家族などとよく相談したうえで、手続きを進めていきましょう。
noteにも掲載しています。
⇒https://note.com/nouproblem/n/n41c7054486c4
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