脳動脈瘤の手術の目的
脳の血管にできたコブ(脳動脈瘤)は、破裂していない状態を未破裂動脈瘤、破裂して出血した状態をくも膜下出血と呼びます。くも膜下出血の場合、破裂した後、動脈瘤にはかさぶたができて、血が止まっている状態です。しかし、かさぶたははがれやすく、放っておくと再出血してしまい、命を落とす可能性があります。ですので、くも膜下出血の場合は、もう1度破裂(再破裂)するのを予防することが最も大切です。一方で、未破裂動脈瘤は、まだ破裂しておらず、急いで治療する必要は通常ありません。未破裂動脈瘤の破裂率などについては、こちらをご覧ください。
脳動脈瘤の手術の目的と手術法
脳動脈瘤の手術の目的は、破裂あるいは再破裂の予防で、手術法は大きく分けて2つあります。
頭を開けて動脈瘤を金属で挟む開頭クリッピング術(参照:開頭術)と
カテーテルという細い管を血管の中を伝って誘導し(参照:血管内治療)、金属の糸をぐるぐると巻くコイル塞栓術です。どちらの治療が良いかは一長一短ありますので、主治医の先生とよく相談してください。年齢、重症度、動脈瘤の場所、サイズ、形状、さらには出血の量などを見て、総合的に判断されます。どちらの治療も対応可能な病院での治療をおすすめします。近年は、血管内治療の機材が進歩してきたことから、コイル塞栓術が増えつつあります。
開頭クリッピング術
頭の骨の一部を外し、脳と脳の間を分けて奥に進み、動脈瘤を金属のクリップで挟む手術です。昔から確立している治療法で、再発率がコイル塞栓術よりも低いことが最大のメリットです。一方でコイル塞栓術と比較して、やや侵襲性の高い治療法です。
開頭手術についてはこちらをご覧ください。
起きうる合併症
・術中破裂:治療中に破裂することがあります
・脳内出血:再手術が必要な場合があります
・脳梗塞:大きい血管が閉塞した場合に起こります
・脳損傷:頻度は高くありません
・感染症:傷や頭の中に起こります
これらの合併症はそれほど高頻度なものではありませんが、一定の確率起こり得ます。
コイル塞栓術
ここ10~20年程度の間に発展した治療法です。足の付け根もしくは腕からカテーテルという細い管を、血管の中を伝って動脈瘤まで到達し、コブの中に金属の糸を巻いてくる手法です。こうすることで、コブの中に血が流れ込むのを防ぐことができます。クリッピングと違って、頭を開けなくてよいことから、患者さんの体にはやさしい治療です。頭の深い位置にある動脈瘤でも安全に治療することができます。一方で、治療後の再発率がやや高いことが弱点です。
治療の流れ
基本的には全身麻酔(完全に意識がなくなる)で行いますが、局所麻酔でも治療可能なケースもあります。
① 太めのカテーテルを足の付け根(もしくは腕)から、首を通って、内頚動脈までもっていく。
② 治療中に再破裂したときに対応できるよう、瘤の入り口に風船(バルーン)をスタンバイさせておく。
③ 細いカテーテルを太いカテーテルの中に入れて、動脈瘤の中まで誘導する。
④ 金属の糸(コイル)をなるべくしっかり詰まるまで巻いてくる。この際、コイルが出てこないようにするために、適宜風船を膨らませることもある。
⑤ 確認の撮影を行い、終了。
起きうる合併症
・術中破裂
・血管の閉塞
・最初に針を刺す部分の皮下血腫
それぞれのメリットデメリットをまとめると以下の表のようになります。
メリット | デメリット | |
開頭手術(クリップ) | 再発率が低い 術中破裂時のコントロールがコイルより容易 | 傷が大きい(ことが多い) 術後の痛みが強い 感染リスクがある |
血管内治療(コイル) | 頭を開けなくてよいため低侵襲(最大のメリット) 表面から深い場所にある動脈瘤でも安全に治療可能 | 術中破裂時のコントロールが難しい(ことがある) 脳梗塞のリスクがやや高い 再発率がやや高い |
また、どのような人に治療が選択される傾向にあるかをまとめます。
まとめ
脳動脈瘤の2大治療法を紹介しました。どちらの治療が良いかは、患者さん毎に違ってきますので、必ず主治医の先生とよく相談してください。どちらの治療も対応できる医療機関で手術してもらうことをおすすめします。
noteにも掲載しています。
⇒https://note.com/nouproblem/n/n8b6f85f65bb9
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