はじめに
脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりして、脳の障害をきたす病気です。脳卒中は一度発症してしまうと、たとえ治療したとしても後遺症が残ることが少なくありません。脳の細胞がダメージを負うことで、手足が動かない、言葉が出づらいなど、さまざまな障害が残る可能性があります。後遺症によっては、日常生活に影響が出ることもあるので、ご自身やご家族が脳卒中になったときは、脳卒中の症状や治療だけではなく、後遺症まで知っておくことが大切です。
リハビリの必要性
かつては脳卒中発症後すぐに体を動かすと、さらに症状が悪化するといわれてきました。しかし、現在の治療ガイドラインでは、発症直後からのリハビリが強く推奨されています。神経機能の回復メカニズムはまだ良く分かっていないことも多いですが、少なくとも早期にリハビリテーションを開始することで、機能予後は格段に良くなり、誤えん性肺炎などの合併症も予防することができます。リハビリテーションには、体の運動機能の回復だけでなく、心理的・社会的な回復も含まれています。
リハビリテーションの3つの時期
脳卒中のリハビリは3つの時期に分けて進められます。
まず、脳卒中の発症から約2週間までが「急性期」。急性期のリハビリは、発症時に入院した病院で行われます。続いて約3~6か月までが「回復期」。この時期にリハビリを行う場所は、リハビリ専門の病院などです。その後は、自宅や施設に戻り、リハビリを行う「維持期」になりますが、最近では「生活期」とも呼ばれています。
急性期:発症時入院した病院
脳卒中の急性期には手術やカテーテルさらには点滴による治療が行われますが、それと同時並行でリハビリが行われます。特に発症して数日はベッド上で安静にしておく必要がありますので、それによりさらに体の機能が低下することがあります。具体的には、ベッドから起き上がったり座ったりする練習、自分の手足を動かす練習、関節が固まらないように可動域を維持する練習などがあげられます。無理のない範囲でベッド周辺でのリハビリテーションを開始します。
急性期で行うリハビリテーション
・手足の関節を動かす
・麻痺のある手足を良い位置に保つ
・寝返りを打つ
回復期:リハビリ専門病院
急性期を脱し病態や血圧が安定してきた頃、症状に応じて様々なリハビリテーションが開始されます。基本的には、日常生活を行う上で必要な動作が行えるよう運動機能・嚥下機能・高次脳機能などを改善させるリハビリテーションが中心となります。服や靴の着脱、散歩、調理練習など、日常生活に必要なリハビリテーションを行うことで、体の機能の向上に努めます。症状の改善に加え、ベッドから1人で車椅子に乗り移る、復職訓練などさらに生活機能を高めるための訓練を行っていきます。
生活期:通院や自宅・施設
一度回復した機能も、退院後何もしないでじっとしていると、再び機能低下が進みますので、外来や介護保険を利用したリハビリテーションを続けることはきわめて重要です。生活期のリハビリは患者さんの自宅や施設で行われるため、回復期の段階から生活環境を整えておく必要があります。自宅での生活環境のポイントは、手すりやスロープ、踏み台などで段差をなくすことです。転倒を予防し、自立した生活ができるように整える必要があります。詳しくは脳卒中患者が利用できる社会サービスを参照してください。「回復期」「生活期」のリハビリで運動機能を改善するには、麻痺のある側・ない側の双方をバランスよく鍛えていくことが大切です。
noteにも掲載しています。
⇒https://note.com/nouproblem/n/nd7fab5ae0c49
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