椎骨動脈解離とは?
血管は「バウムクーヘン」のようにいくつかの層を持った構造になっています。動脈は内弾性板、中膜、外膜の3層からなっており、そのなかで一番内側にある内弾性板に傷がつくと、普段はくっついている内弾性版と中膜の間が、血圧によって血流が流れ込むことでどんどん広がっていき、裂けてしまいます。この状態を動脈の解離といいます。椎骨動脈は特に「解離」が起きやすい部分であり、50歳以上の男性に好発しやすいといわれています。椎骨動脈解離はさまざまな合併症を引き起こしますので、注意が必要な病気です。とくに怖い合併症は脳梗塞とくも膜下出血です。
脳梗塞
血管の壁に血液が流入することで、もともとあった血管のspaceが狭くなってしまいます。それにより、もともと正常だった血液の流れがとどこおってしまうことで、脳への血流が低下し、脳梗塞を起こしてしまうのです。椎骨動脈は、小脳や脳幹といった大事な機能を持つ部分に血液を送っており、解離によって小脳梗塞、脳幹梗塞を引き起こすことがあります。
くも膜下出血
通常、動脈にできたコブが破れることでおきるくも膜下出血ですが、椎骨動脈解離では少し様子が異なります。血管の壁が裂ける(解離する)ということは、血管の壁が薄くなるともいえます。薄くなったところに血液が流れ続けることで、血管の壁がふくらみ、さらに破れてくも膜下出血を起こすことがあります。このふくらみを解離性動脈瘤といいます。
症状は?
椎骨動脈解離の代表的な症状は、頭痛、特に後頚部痛(首の後ろの痛み)です。この痛みの原因は血管が裂ける過程で起きると想定されています。脳梗塞を同時に起こしている場合には、手足が動かしづらい、感覚がおかしい、飲み込みができないなどの症状が起こります。また、裂けた部分の血管の壁が破れるくも膜下出血では、強烈な頭痛や意識障害をきたすことがあります。
検査は?
代表的な検査はMRIです。MRIの1つであるMRAでは血管の構造が把握できるので、椎骨動脈解離の有無が分かります。また、MRIでは発症して間もない脳梗塞も判定できます。CTでは、くも膜下出血の有無が判断できます。血液の流れを詳しく調べるために、脳血管撮影というカテーテル検査を行うこともあります。
治療は?
症状が頭痛だけといった軽症の場合には、特に手術などをせず、血圧を下げるなどして様子を見ます。しかし、軽症であっても解離性動脈瘤を生じている場合には破裂することがあります。通常2週間~1か月以上破裂がなければ、安全と考えていただいて大丈夫です。ですので、その期間は入院して経過を診ることがあります。一方で、くも膜下出血を起こした場合には、再出血のリスクが非常に高く、再破裂を予防するための手術が必要です。手術は、血管内治療(上の図の左2つ)もしくは開頭手術(上の図の右2つ)が行われます。血管内治療によるコイル塞栓術ではプラチナ製のやわらかい糸を動脈瘤につめる手術です。解離性動脈瘤は複雑な形状をしているため、通常の動脈瘤のようにうまくコイルを詰められるケースは少なく、ステントという金網器具で支えながらコイルをつめる、あるいは血管ごと全部詰めてくるといった特殊な治療が行わることがあります。開頭手術によるクリッピング術は、クリップで動脈瘤のくびれをはさむ治療です。しかし、解離性動脈瘤では、くびれがない場合が多いため、血管ごとクリップする方法をとることもあります。もとの血管から重要な血管が枝分かれしている場合には、血管ごと止めてしまうと血流がなくなり脳梗塞を起こしてしまいますので、バイパス手術(血流を他のところからもってくるための道を作る手術)を一緒に行うことがあります。解離性動脈瘤の治療は複雑ですので、慣れている医師に治療をお願いするのがおすすめです。
予防は?
全てを予防できるわけではないですが、特に首を急に動かす動作はなるべく控えましょう。特に、カイロプラクティック、スポーツ、急に首をひねるような外傷、首を鳴らす、などの動作により、椎骨動脈解離を起こすことがあるといわれています。
noteにも掲載しています。
⇒https://note.com/nouproblem/n/nbe7c16d507a3
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